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施政方針(令和7年度)

町長施政方針

 昨年は、元日に能登半島を襲った地震や、吾妻郡内では鳥インフルエンザが発生し、先行きが案じられる幕開けとなりました。当町においても、水道の大事故や職員の不祥事など、町民皆さまに多大なご心配とご迷惑をおかけする結果となってしまいました。ただ、悪いことばかりではなく、良いことも沢山あった1年でありました。この10年間で私が次々に立ち上げた新規事業も少しずつ形になり、職員がワンチームとなり行財政改革に挑んできた結果、町長就任当初に比べると財政状況も格段に改善され、安定してまいりました。

 皆さまもご存じの通り、令和7年度は4年任期の最終ラウンドの年であります。辛く厳しい町政運営ではありましたが、私が今もなお、こうして立っていられるのは、町民皆さまのご支援やご声援、そして多くのご協力の賜であり、改めて全ての皆さまに心からの感謝と御礼を申し上げます。これからも町民皆さまの幸せを守るため、最後のゴングを耳にするまでは、あらゆる困難に立ち向かい乗り越えて行きますことを、ここにお誓い申し上げます。

 昨年も引き続き「つなぐ」「育てる」「共に創る」という3つのテーマのもと、選挙公約として掲げた8つの目標を軸に事業を組み立て、様々な施策に取り組んでまいりましたが、先ずはその8つの目標について触れさせて頂きたく存じます。

『町づくりに必要な交通対策』については

(1)小・中・高校生がいる家庭の暮らしを良くする

(2)高齢者や障がい者の移動サービスを拡充する

(3)電車やバスで来た観光客も移動できるようにする

(4)安心できる既存の民間事業者を大事にする

上に記載した4つの基本方針のもと令和4年に地域公共交通活性化協議会を立ち上げて取り組んでまいりました。(1)に関しては駅まで遠い高校生を対象に送迎の実証実験を行ったうえで、令和6年度から金銭的な支援を行う事になりました。(2)に関しては、福祉バスや外出支援バスの拡充と共に、町が8割を助成するタクシー利用助成事業をスタートさせました。特にタクシー利用券については多くの町民皆さまから好評の言葉を頂いているところであります。このことについては(4)の「既存の民間事業者を大事にする」ことに大きく貢献していることと理解しています。(3)に関しては町が直接関与していませんが、令和6年度から民間事業者による八ッ場エリアの周遊バス(八ッ場ぐるりん)の運行が始まりました。 

 地域公共交通活性化協議会の立ち上げから僅か2年半で、一定の成果を出すことが出来たと評価しておりますが、行政が行う公共交通の支援においてゴールはありません。限られた予算の中で、より大きな効果を得るために、既存の事業のブラッシュアップを行っていくとともに、町民皆さまの生の声に寄り添いながら『地域と人を繋ぐ公共交通』という基本理念のもと新たな事業展開を考えてまいります。

 『情報格差の解消』と『デジタル化の推進』については、この3年間、民間企業との協力や協業が功を奏したと捉えております。特にNTTドコモグループと共に構築した町アプリとプラットフォームは全国自治体のロールモデルとなり注目を集めました。アプリのダウンロード数も約5700件と町の人口を超えました。小さな町であるとはいえ、人口を超えるダウンロード数を達成できたことは、全国各地の自治体の町アプリと比較しても、稀に見る快挙と言っても過言ではありません。以前のことになりますが、当町は新型コロナウイルスのワクチン接種において全国でもトップクラスのスピードで推進したことや、マイナンバーカードの交付率が全国の町村ランキングで3位に入るなど重要なポイントで快挙を達成してきました。これらを見ても分かるように、長野原町には、いざというときに一致団結して大きな力を発揮できる町民性があると理解しております。

 これはDXを推進していくうえで大きなアドバンテージであり、これからもアプリやプラットフォームの改善を行なっていくとともに、変化を恐れずチャレンジをして行きたいと考えます。令和7年度はマイナンバーカードを持っていて良かったと思える施策も取り入れる予定であります。

 また、町からの情報発信、高齢者の見守り、防災情報の発信など、置き型タブレット端末を利用し、双方向通信の特性を活かした情報取得手段を地域の代表者を対象に実証実験する予定であります。町全体のDX推進に関してはまだまだ道半ばですが、この3年間の我々のチャレンジは大きな一歩であったと捉えています。

 『災害に強いまちづくり』については、令和4年度に地域防災計画を一新し、令和6年度にはBCP(事業継続計画)と受援計画を策定したところでございます。避難行動要支援者に関しては、医療依存度の高い方を中心にリストアップし随時更新することに致しました。各地区の自主避難計画に関しても年次計画を策定し、令和10年度にはすべての地区の計画を完了する予定です。計画やマニュアルは整ってまいりましたが、何より重要なことは、地域住民の防災に対する意識でございます。何度も申し上げていることですが、町民一人一人が主体者となり町や議会、更には民間企業も含め、町全体で防災に向き合える町を構築していくことが当面の課題であります。

 『学校統合と空き校舎の利活用』については平成30年より6年にわたって進めてきた学校統合も令和6年4月に浅間小学校を開校することで一つの節目を迎えることが出来ました。学校統合の問題は他の町村を見ても、地域の分断を生み大問題に発展していくケースも少なくありません。現に当町の歴史を振り返ると、手を付けることも出来ずに頓挫していた経緯があります。その困難をこれ程の短期間で乗り越えることが出来たのは、携わって頂いた町民皆さまの大きな力のお陰であります。

 その統廃合で空き校舎となった旧応桑小学校は、診療所をはじめ薬局や売店、誰もが集えるパブリックスペースや子ども公園を整備し『オークワテラス』として今年の4月にグランドオープンを迎えます。旧北軽井沢小学校は令和8年4月にLCA国際スクールの北軽井沢校を開校するために準備を進めているところであります。もう一つの空き校舎である旧第一小学校の校舎に関しても民間企業に営業や折衝を随時行っておりますので、なんとか令和7年度中に先鞭をつけたいと考えております。旧第一小学校は、予てから医療や福祉に特化した施設にしたいという思いがありますので、その様な事業者の誘致に力を注いでいく所存であります。北軽井沢に新たな教育、応桑には新たな地域コミュニティー、そして林に新たな福祉を整備することで、3つの空き校舎が長野原町の生きる力を育む3つの拠点となり、長野原町が未来に向けて大きく動き出すことになります。

 いずれにせよ、全国各地で空き校舎の利活用には苦心惨憺している中、短期間で道筋を付けることが出来たのは評価に値することと受け止めております。

 『農林福連携から始めるバイオマス産業都市構想』については、国の指針によると都道府県及び市町村は2025年までにバイオマス活用推進基本計画等を勘案し、それぞれの地域のバイオマス活用推進計画の策定に努めることとされています。なお、バイオマス産業都市構想の認定を受けている市町村はこの構想をバイオマス活用推進計画として位置づけることが出来ると謳われています。この計画策定に関して、全国の自治体が四苦八苦しているのが現状であり、指針通りに進捗しておりません。ただ当町に関しては、令和4年にバイオマス産業都市の認定を受けております。いち早く目を付け取り組んだ当町の先見性には一定の評価を頂いておりますが、それよりも我々は長野原町にある豊富な資源や環境に対し、改めて誇りを持つべきであり、その宝物をいかに町民の幸福に落とし込んでいくことが出来るかが最大の課題であります。

 『新たな観光スタイルの発信と教育旅行の誘致』の目標に関して改めて思うことは、令和2年に立ち上げた「つなぐカンパニーながのはら(以下「つなカン」と称する)の存在であります。現在、長野原町で「新たな観光スタイルの発信と教育旅行の誘致」の重要な一翼を担っているのは「つなカン」だと思います。ただ、なかなか町内の理解が得られていないことが、課題であります。町民の皆さんも、行政に不平を言っていても何も始まらないということを既に気付いているはずです。「つなカン」の中には町の事を自分ごととして捉え、考え、行動できる人間が大分増えてきました。あらゆる種もまいてきました。こういう力が一人増え二人増え、大きなムーブメントに変わっていくことを今は期待をしながら見守っていきたいと考えております。町内の目とは反して、町外からは評価は高く、総務省からも「つなカン」の活動が認められ、令和7年度からは人件費分の交付金を国から頂けることになりました。

 これからは地域内外の住民や地域内外の企業、そして行政が肩を組んで町づくりを推し進めていく時代だと思います。観光だけではありません。先に述べた全ての目標に対して言えることであり、長野原町に対する愛着や誇りの醸成とともに当事者意識が芽生えていくように、私自身も注力していく所存であります。

 以上、7つの目標の振り返りをさせていただきましたが、8つ目の目標である『希望をもって暮らしていける地域づくり』と一番大きなスローガンである『生きる力を育む町』をもとに、私の町政に対する所信の一端を述べさせて頂きます。
 

 町長に就任当初から『生きる力を育む町』をキャッチワードとして声を上げ続けてまいりました。私の政策や事業においても、その言葉を基本理念として組み立て行動してきました。先に申し上げましたが、長野原町は現在LCA国際学園と連携して、非認知能力の育成と生きる力を持った未来を担う人材を育てるため、まさに『生きる力を育む町』の実現に向けて取り組んでいます。 

 ご存じの通り本町では教育大綱において「自立と共生」を理念に掲げ、教育行政を推進しております。多様化する社会の中で将来を担う子ども達が、予測困難な時代を生きていくには、学力だけではなく、課題を発見し解決する能力やコミュニケーション能力、相手の気持ちを理解しサポートできる協調性などが重要な要素になると感じています。既にそのような方針で子ども達を教育している学校を誘致し、地域人材の育成に取り組む決意を致しました。この計画において長野原町が目指すところは、LCAのアクティブイマージョン教育の実績と特徴的な教育課程を活かし、公教育の枠を超えた教育の在り方を発展させ、地域の教育力を新たな視点で高めていくことにあります。一方で、当町の自然豊かな環境と新たな学校の特徴的な教育方針を求め、全国からの教育移住も想定されることから、人口減少対策や交流人口の増加による活性化も大いに期待されるところです。教育環境は、移住を考える子育て世代の方々の大きな関心事の一つであります。令和7年度は子育て世代の移住者に対する支援も大幅に拡充する予定であります。

 また、地域の方々は、統合により学校が無くなった寂しさを抱えておりましたが、これまでと同様に子ども達の賑やかな声が聞こえる教育施設として空き校舎が利活用されることへの喜びを感じて頂けるものと思います。地域に根ざしたグローバル人材を育成するとともに地域住民にとっても大いにプラスになる地域に開かれた学校にしていきたいと考えています。

 今回の学校誘致計画が長野原町に好循環をもたらし、学校間の連携や地域コミュニティーの拠点として定着していくよう尽力してまいります。そして、将来をたくましく生き抜く子ども達を育てる町として先進的なモデルとなるよう、町としても先ずはその礎をしっかりと築いて参りますことをお約束申し上げます。

 昨年私は長野原町民の町に対する愛着や誇りについてもう一度向き合い、真剣に考え、町のシビックプライドを醸成していくことを宣言いたしました。グローバルスクールの誘致計画は、まさに町の新たな魅力となり、誇りも生まれてくるものと信じています。

 小学校は地域住民にとって、とても愛着のある重要な拠点施設です。ただ、学校の建物を学校以外の用途に変更し利活用するためには、いくつものハードルをクリアしなくてはなりませんし、多額の資金も必要です。全国各地の自治体で空き校舎が上手く利活用されていないのは、それが一つの要因です。今回、旧応桑小学校は「オークワテラス」へと生まれ変わりますが、これこそまさに愛着や人と人との繋がりを育む施設になることを期待しております。地域になくてはならない医療や物販を提供し、新たな地域コミュニティーと新たな人の交流の創出を見込んでおります。パブリックスペースでは子どもから高齢者まで誰もが気軽に集うことが出来る空間になっており、屋外の子ども公園には木の温もりを感じられる遊具などを配置した作りになっています。

 また、学校には行き辛い、もしくは休みがちになってしまう子ども達の居場所づくりとして、教育支援センター『花まめ』も併設する予定であります。「子ども達の声をなくさない」というコンセプトの通り、子ども達の笑い声の絶えない地域コミュニティーのベースになるよう、力を注いでいく所存でございます。

 かつて我が国は地域や家庭、職場においても、支え合いや助け合いの精神で物事が成り立ってきた経緯があります。しかし近年、人と人との繋がりの希薄化が進み、その支え合いの基盤がかなり弱まってきております。高齢化や人口減少が進む現在ですが、今こそ、これを再構築する時であると私は思います。誰もが当事者となり、お互いを認め合い、支え合うことであらゆる困難をも乗り越えられる、そんな地域をここ「オークワテラス」で育み、長野原町から全国に発信していきたいと強く願っております。

 そもそも雄大な浅間山の麓に位置する応桑は支え合いの文化と共に歩んできました。とにかく『オークワテラス』には未来の明るい光を燦燦と『照らす』地域コミュニティーの拠点になるよう、地域の皆さんと共に創ってまいりたいと思います。

 予てから私が申し上げてきたことですが、長野原町の創生もしくは再生のキーポイントは、その浅間高原の地域が元気になることだと今でも強く思っています。

 令和7年度は浅間高原が元気になる未来構想とグランドデザインを創っていく考えであります。一昨年に北軽井沢のグランドを取得したことにより、住民センターやミュージックホールをも一帯的にリノベーションを施していく決意に至りました。もちろん観光客のための拠点施設として考えることは当然のことでありますが、地域の野菜農家や酪農家の皆さんのポテンシャルを最大限引き出せる拠点でありたいと思っています。例えば地元の野菜やミルクを使った飲食や物販などを提供できる施設や心地よい空間を整備したいと考えています。これは単なる道の駅のようなものではなく、あらゆる英知を結集して浅間高原の可能性を引き出せるものにしたいと思います。

 旧北軽井沢小学校の『グローカル教育構想』・オークワテラスの『地域コミュニティ構想』・そして北軽井沢、応桑の『浅間高原未来構想』。この3本の柱を実現するため、今まで培ってきたあらゆる人脈や力を一つに繋げたいと考えています。現在、力を貸して頂いている企業の皆さんをはじめ総務省の地域活性化企業人の制度も積極的に活用する予定です。

 今回はあえて浅間高原をクローズアップさせて施政に対する私の熱い思いを述べさせていただきました。ご存じの通り長野原町は長い間、国策である八ッ場ダムの事業に引っ張られ、また関係者以外の方が関わる事ができませんでした。八ッ場ダム事業と同じような莫大な資金は投入できませんが、あらゆる知恵と総力を投入する準備は出来てきました。大切なのは、全町民の方々が浅間高原を自分たちの誇りとし、愛着を持つことです。

 そして、新しい時代を担う次の世代が地域課題の解決と持続可能な発展に取り組む(ローカルゼブラ)ような動きが生まれることを願うばかりであります。

 更に、これからは町村の垣根を越えた取り組みを積極的に推し進めていく必要があると考えます。なぜならば、今後急速に進む人口減少社会の中で、生きる力を育んで行くには広域的な連携が大きなファクターになります。只今、六合中学校の生徒を長野原中学校に受け入れる準備を進めているところですが、これは新たな広域連携のロールモデルになることと期待されています。町長に就任して12年目を迎えますが、吾妻郡内でもリーダシップを発揮できるよう、これからも精進していく所存でございます。

 令和7年度も「つなぐ」「育てる」「共に創る」というテーマのもと大きな一歩を踏み出します。

 今回、例年とは施政方針の趣向を変え、冒頭で「施政方針の一端」と申し上げましたが、まさに施政のごく一端に私の思いや魂を詰め込ませていただきました。なぜなら私が行っている施策一つ一つに対して思いを述べるのに一時間や二時間では、あまりにも時間が短すぎるからです。このため今回の施政方針には細かいことや金額的なことは全く謳っておりません。但し、令和7年度は非常に重要な局面の年でありますので、議会のたびに折に触れて施政の一端を訴えていきたいと存じます。それは、令和6年度から準備を進めております長野原町の最大の指針となる総合計画を一新する年でもあるためでございます。今までの総合計画の期間は10年間と、あまりにも長いもので、解りづらく、町民の皆さんが手に取るのも憚られるようなものでした。今回の計画の期間は5年間とし、誰もが手に取りたくなるような、更には視覚に訴えるような長野原町の未来予想図を描いていきたいと考えております。

 いずれにしても、町民の皆さんにとって「愛する町」「誇りある町」にすることが私に課せられた最大の使命です。

 以上、『生きる力を育む町』という基本理念のもと皆さんと共に、これからも歩んでいきたいという私の願いを込めて申し述べさせて頂きました。
 町民の皆様の期待と信頼に応えるため、令和7年度も全身全霊、粉骨砕身の覚悟で取り組んでいく決意でございます。また、誰一人取り残すことなく、まさに「オールながのはら」の精神で全力を尽くしていくことをお約束いたします。
 引き続き議員の皆様をはじめ町民皆様のご理解とご協力を賜り、格別のご指導とご鞭撻のほどを心よりお願い申し上げ、新年度に向けての施政方針とさせて頂きます。

 長野原町長 

萩原 睦男

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